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金泰生(きむ てせん、김태생、1924年 - 1986年)は、在日朝鮮人の作家。代表作に『骨片』『私の日本地図』などがある。
金泰生は、ひっそりと地を這うような文体で、名も無き在日朝鮮人庶民の姿を描いたことで知られる。
1924年11月朝鮮済州島に生まれ、1930年渡日。幼少年期を貧しい叔母に育てられ、自らも働く少年であった。戦後結核を患って8年に亘る療養生活を余儀なくされた後、保高徳蔵の『文芸首都』に参加。なだいなだ、北杜夫、森礼子らと交流して日本語を磨いたが、1960年代には一旦文学から離れて朝鮮民主主義人民共和国を支持する立場から組織に勤務し、雑誌『統一評論』に「安在均」のペンネームで多くの記事を残した。1972年雑誌『人間として』10号に小説「骨片」を発表。以後『季刊三千里』や『未来』などに書き続けた。1986年12月他界するまでに、市販された本は4冊と、収録されなかった小説もいくらか残したが、畏友金石範が大佛次郎賞を受賞するなど活躍するのに比較すると地味な作家だった。しかし、在日朝鮮人の名も無い一人ひとりの生を問うこと。とことん生きることで「この国の歴史」から死んでいった人々の分まで「貸しを取り立て」ようという、金泰生文学の価値は今も色を失うことはない。
この年の6月、『人間として』10号に小説「骨片」を発表した。『人間として』は、小田実・開高健・柴田翔・高橋和巳・真継伸彦の共同編集の体の季刊誌で、筑摩書房発行だったが同人誌的性格を持っていた。高史明(コ・サミョン)の「夜がときの歩みを暗くするとき」も、この雑誌に創刊号から連載された。
金泰生文学は「骨片」の発表を以て再開した。
「骨片」は、憎むべき父へのこだわりを描いた習作「心暦」から大きく踏み出し昇華している。「心暦」では描かなかった父の死の確認を「骨片」で行い、そのことに重要な意味がある。金泰生の父を見る眼差しがいつしか自己凝視となっていたからである。
死を見つめ、時代を見つめてきた作家にとって、自己とは父の骨片のように小さく軽いものであり、また日本社会は在日朝鮮人を閉じ込める「湯呑茶碗ほどの粗末な木箱」程の骨箱にすぎない。死者の息つぎは、金泰生の「心臓の鼓動にあわせて微かに動」く。金泰生独特の文学的世界観が確立された。
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